「宝塚BOYS」@シアタークリエ

出演:吉沢悠 良知真次 中河内雅貴 入野自由 上山竜司 小林大介 板倉チヒロ 初風諄 山路和弘
原案:辻則彦(「男たちの宝塚」より)
脚本:中島淳彦
演出:鈴木裕美

冒険者たち」で観たガンバ上山くんのパフォーマンスがとても良くて好きで好きで、他のも観てみたいナア、しかもこれ演出鈴木裕美さんだしナア…とずっと悩んでいたのですが、直前でちょっとお安く見れることになったので飛びついて行ってきました。昨日観たばかりの「風立ちぬ」と図らずしも合わせて思うところがたくさんあり、本当に行って良かったです。さすが4度も公演されてるたけのことはあるわ。やっぱり鈴木さんの演出大好きです。愛情と責任感に溢れているよ。それが伝わらない舞台作品は愛がないとは言わないけれど、それを伝えられる力がある作品はやっぱり観ていて胸打たれます。

戦争直後、男子の身で宝塚に飛び込みたいと思ったメンバーの気持ちには、想像できないほどの必死さと渇望と、エンターテイメントへの愛情があったのだと思う。それがこのお芝居のなかでも存分に表現されていて、娯楽とそれを作る人たちに人生を支えられているような私は涙せずにはいられませんでした。そうだよ、人を楽しませることを生業にするって、すっごいことなんだよ。

男子部のどのメンバーもみな抱えているものがあり、それぞれの物語の描写もしっかりしていて素晴らしかったです。「風立ちぬ」の二郎には外側に敵がいなかったけれど、男子部の彼らには周りが敵だらけで、そんななか「いつかくるその時」を夢見て頑張る姿は、滑稽でさわがしくてマヌケでかわいくって魅力的でした。不安を笑ってごまかしながら、認められず、報われない空しさに怒りをぶつける様はとても眩しくて泥臭くて、とても「懸命に生きている」。そんなの愛さずにいられないです。風立ちぬで感じた二郎へのつかみどころのない輪郭は、男子部とは正反対の儚さにあったのだと思う。

ちはやふる」とかでも思うけれど、自分の夢にまっすぐに生きようとする若者たちには必ず、それを支えてくれる大人が居て、それなしでは若者たちは涙と笑いのドラマにはなりえない。夢の物語は現実を知る人の存在があってこそ成立する。だから切なくて優しいのだ。