「サンセット大通り」@赤坂ACTシアター

キャスト:安蘭けい 田代万里生 鈴木綜馬 彩吹真央浜畑賢吉/戸井勝海 矢崎広
作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
脚本・作詞:ドン・ブラック&クリストファー・ハンプトン
修辞・訳詞:中島淳彦
演出:鈴木 裕美
音楽監督:塩田 明弘

あらすじ:
ハリウッドのサンセット大通りに面するある邸宅のプールに、若い脚本家ジョー・ギリス(田代万里生)の死体が浮かんだ。死んだ彼はそのいきさつを語る……。
失職ライターのジョーは、映画会社への脚本売り込みも意の如く進まず、貧窮のどん底にあった。ある日、月賦の払込み不足から自動車会社の男に追いかけられたジョーは、サンセット大通りにある荒れ果てた邸宅に逃げ込む。そこにはサイレント映画の大女優ノーマ・デスモンド(安蘭けい)が、かつて映画監督であり、最初の夫だったマックス・フォン・マイアリンク(鈴木綜馬)を執事として、過去の夢に生きていた。ジョーが脚本家だと知ると、ノーマは主演を念願している「サロメ」のシナリオを書くように、とジョーを邸に泊めさせることにした。若いジョーにとって、この妄想狂の老女の相手は空虚な生活に違いなかったが、ずるずるとその位置にはまり、ノーマと抜きさしならない関係に落ち込んでゆく・・・

豪華で贅沢たっぷりの本格ミュージカル、とっても楽しかったです。明暗のはっきりした場面展開と音楽の使われ方、舞台装置も素晴らしく、目が離せなくて終始引きつけられる舞台でした。本当はあと1回くらい観たかったのだけど、お値段も贅沢なので…。
矢崎くんがこういう豪華な舞台で、のびのびニコニコしながら歌って踊ってるところを観れて嬉しかったなー。こんな役やってるとこ観たかったんだーという感じ。また愛らしいのだよアーティ、ちょいとかわいそうなのだけども(笑)。



ノーマ様の狂気ゆえの美しさと滑稽さゆえのかわいらしさ、壮絶ですごかったです。その魅力をふんだんに(歌も衣装も舞台装置も)魅せているからこそ、観ているほうも彼女に惹かれるし移入できるのだろうなと。過去の栄光にすがり、現実の自分(本当は白髪だったり)を見ずに、それでも昔の仕事現場に行けば自分の魅力よってちやほやもしてもらえて、そして一番側に居るのはかつても今も愛してくれた元夫の執事ってさ…結局、彼女は一般人から見ればみじめかもしれないけど、幸せだよなあと思ってしまった。エンディングとカーテンコールで、マックスが常に彼女に寄りそうのも、救いはないけど閉鎖的で輝かしい未来を示唆している気がした。ずっと少女のように夢のなかで生きるということは、そういうことだよね。実際にそれを支えてしまうだけの魅力が伴うのだし。そんなノーマ様@安蘭さんの説得力がすごかったです。話す声は老女のようなのに、歌声が瑞々しくて。笑いも起こっていたけど、「私を見て」とあんだけ大熱唱しておいて即「さあもう帰りなさい」とか(笑)。マダムってば!
執事マックスは、終始マダムのことしか見ていないという態度があの前かがみの姿勢からも伝わってきました。歪んだ愛が純粋になるのか、純愛が歪んだものとして残るのか、マックスとノーマのあいだにはそういう関係があると思う。

結局ジョーだけが、自分と女性ふたりに翻弄されまくって死んでしまうのだけども、まりおさんのあの存在感、すごくハマっていたなあ…いかにも借金とかしてそうで、プライドが高そうで、落ちぶれマダムに惚れられそうで、若い女の子とすぐ恋に落ちそうで、そしてどっちも欲しがるくせに最終的に全部蹴る(笑)。ベティ@彩吹さんの声も個人的に大好きでした。ジョーとベティの場面では、対ノーマのときと対照的に華やかでキュートな空間になるのも相乗効果で楽しかった。ふたりが脚本を描きながら「ふたりは〜おなじ〜(仕事)」と歌いあげているところ、あれ完全にお互いを正当化してるだろ!そんな楽しそーに歌ってればいいってもんじゃないよーアーティがかわいそうだよ!ロケ行ってるあいだにー!(笑)
そんなアーティ@矢崎くんは、ベティの婚約者で出番は1部のみなのですが最初からちょくちょく出てくるし、にぎやかで楽しいアンサンブルでもジョーのとなりで映えてました。「だからメス馬はダメだって言ったろ!」(どういう会話)とか、ジョーのコートを脱がして「わぁお!!」とか、コミカルな部分もピンで与えられてて、観ていてニヤニヤしてしまいました。ベティとイチャイチャしてるとこかわいかったー。ほっぺにチューも2回。野心があってしっかり者のベティが、結局ダメーな感じのジョーに惹かれてしまう展開において、良い対比になってました(つまり当て馬…)。あの伸びやかで、湿度の高い声を堪能できたのも満足です。

またこういう舞台にお呼ばれされたら嬉しいな。鈴木裕美さんの演出も気になります。