「ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭」

去年は早い段階で年末の祭シリーズはお休みしますと告知があって、そして2017年はかなり早い段階でお芝居のテーマは「SANADAMA・る!」と告知され、それ絶対大山くんの大河抜擢をネタにしたかったんでしょ!?そういうところ好きだぜ!るーちゃん!新規メンツも多いしその新規メンツのお客さんも多いだろう今年、とにかくるーちゃんの気合を感じました。そういう見方をしてしまうくらいに私も古参なので…。29日と30日の昼公演に行ってきました。大阪も行きます、たーのーしーみー。

板垣さんのお話を直接聞く機会を経てこそ思うんだけど、この「大勢でやる」ことに意義がある祭シリーズで、「全員に見せ場がある」「幕の内弁当みたいな作品」という広告に偽りなし、むしろそこをしっかり押さえててくれて、見どころがいっぱいあって本当に面白かった。なんせ伊達、真田、徳川、豊臣の4グループという相関図に、おなじみるひま勢のバランスもちょうどよく、濃縮されていて無駄がない。長くやってきてるからこその力をいたるところに感じました。ムックさんの脚本だと、2者のやりとりが多いから、ニューフェイスの子たちが(わざわざ)出し物コーナーを作らなくても、ちゃんとキャラが立ってて役者としての見せ場が作れるのかなと思う。私は真田丸観てたから分かる、という部分もかなりあったけれども(笑)。この感想を大晦日から2日まで実家に居る間に書きました。言いたいことがたくさん生まれるような公演が観れて嬉しい!




今回、伊達組のキャストが発表されたとき、どう転んでもめちゃくちゃかわいいじゃん…!って期待しかなかったけど、まあとにかく正宗辻ちゃんの脇にいる小十郎兼ちゃんと成実みねくんが素晴らしすぎた…。片倉小十郎が正宗大好きでかわいいのどこの世界もだいたいそうだけど、正宗が自分の背負うものに負けそうになるとき、小十郎がプレッシャーではなく軽やかな優しさで救ってきたからこそ、あの正宗でいられたのが分かる。冒頭の小十郎の「うちのバカ息子がちょっと暴れておりまして」ってセリフだけで、仙台藩の平和さが伝わってきたもん。重長があんな健康的に反抗期してて礼儀がなってないあたりもその表れなんだよなー(笑)。盲目的に主君に仕えて、自分の死ぬ理由にすることが正解だと思えない重長のモラトリアムには、平和な故郷の存在があるし、彼にとって十勇士の死に様が、ただ悔しくて「なんでだよ!」ってものに映ったのも、これから来る(少なくとも正宗が目指した)世を生きていく人の象徴にも見える。安西くんが、ここにきて物語のなかで成長していく役をしていたのも、新鮮ですごく面白かった。座長を冠してこの役、というのも強い…。るひまデビューが目薬屋フェスで、それこそどんな振り幅でも怖くなかろうに。そんでベリー先輩みねくん…最高に萌えキャラだよ。成実の、正宗に対する羨望や嫉妬が最終的に憧憬になって一緒にいるっていう関係、はちゃめちゃ尊くて好き。そしてそんな関係性をしっかり魅せられる辻本木ノ本の安定感な…。

主演が伊達主従というのはなぜ、と思ったんだけど、武士が信じたもののために死ぬのが美しく正しいとされた世の中が終わり、その境目を新しい世代が見据えることを、平和を築き愛した伊達主従W主演という存在から描く意味づけこそ、この作品のメッセージなんだなと思った。幸村に、私たちは理解し合えないのですねと言われ、いいえ、理解しました、互いの理想を、と返す正宗の、相手を変えようとはしない、でも自分も変えない強さと優しさがまたこれ辻ちゃんとぴったりだった。理想を持つ自分が大切だから、理想を持つ相手は侵さない。そしてやっぱり、るひまの良心・辻ちゃんには、最期は笑顔の世界を描いてもらいたい。
幸村は結局、自分の理想のために命をかけることを譲らなかったけど、その逃げ場のない末路に決着をつけてくれたのは信之で、それは信之以外にはできなかったのが悲しいけれど何よりの救いでありたまらなかった。ここにきてるひまに呼ばれた大希くんのドストレートな不器用で板挟みキャラ(でもめっちゃくちゃ歌うまい)の存在感たるや…。あと今回吉本枠宮下くん!本当にお疲れさまありがとう…。幸村の魅力的で宗教的な「強さ」を表す美しさも、十勇士のかわいらしさもギャグパートで存分に描いているから、十勇士が不幸なようには見えず、だからこそ死んでいくときの切なさがひとしおだった。そして今年のホットワードは2部も合わせて2.5次元なんだね(笑)。


この題材ではいろんな豊臣方の描かれ方があるけれど、今回の豊臣方はずば抜けて好きでした。あの秀頼は愛さずにいられないでしょ…!秀頼と木村、再会したとき木村が刀を捨ててぶん殴りあうの、憎くて殺したいとかじゃなくて、ただただお互いに怒っているっていう同質のエネルギーが拮抗していて、まさに兄弟喧嘩してるのがもう本当につらくて悲しいのにずっと観ていたくなるほどだった。板垣さんが板垣塾で、相手のアクションが片方にとっての「出来事」になり、それがまたアクションを生むっていうエネルギーの循環からお客さんは目が離せないって言っててまさにそれ。あれ、やってるほうも楽しい(ハッピーという意味だけでなく)だろうなあ。木村が自分をかばって死んじゃって、お気に入りだったオモチャを取り上げられるような秀頼も、最後に木村の捨てた刀を抱きしめてペコっと頭を下げられる秀頼も、とんでもなく愛おしかった…。なんのためにどう死ぬかってことは、なんのためにどう生きるかってことで、なんのために生きるのか見つけられないままだった秀頼があそこで死んではいけないのが、それまでの大人たちの存在で分かる…。そして淀君と大野の最期も最高でした…!わんわん泣いた。林さん本当に良かったよ〜〜〜。今回「良かった」と思えるひとがほとんど、しかも中堅若手勢それぞれ色の出方が違ってて、それって本当にすごいことじゃない?たっきーの大御所様も本当に良かった。たっきーのたっきーらしい良さも、そこに上乗せされた腹にイチモツある怖さもちゃんと見えて、こちらも何度も明治座で観ているからこそ嬉しく楽しい。



さるたぬのときも思ったんだけど、続けているからこそ積み重なるものは増えていき、変わるものと変わらないものの取捨選択をしないといけない。観ているほうも比べるものがどんどん増えていく。新しい世代が入ってきて、後輩は先輩になって、立場も求められるものも変わっていく。このシリーズはそういうものも調味料にして、豪華なお料理にしてくれる、そんな催しになっていくのかな。私は、こういう趣味において好きでいることで振り返られる過去があるのは幸せなことだと思っていて、今回も思い出されるものがたくさんあって嬉しかった。
ファンも入れ替わっていくけれど、とりあえず一回は明治座に行くって人が一定数は居たり、いちまんにせんえんくらいの金額を「明治座一回分じゃん」てワードをオタク内で共有したりするのって、けっこうすごいことだと思うんですよね(笑)。

まあ大山くんに関しては、題材が題材だというのもあって出させてもらえるんだろうなって思ってたけど…ほんと…すいません…ありがとうございます…みたいな…。このまま推しが明治座の亡霊にならないことを願うよ。