マイクの魔法は解けた

浜口浜村ツインテルが12月14日のライラックブルーで解散を発表した。直後に発表された2組からのコメントは、翌々日の今日にはページがなくなって読めなくなってた。ナタリーさんに転載されていたものを読み返した。
そういう可能性があるらしいことは少し前に耳にしていて、聞けば聞くほど疑いようのないものに思えたし、どうしようもないのだと思うしかなかった。私にとって発表までの一週間ちょっとは、受け入れる心の準備をさせてもらえただけで、彼らを最後に観る時間にはならなかった。最後のあいさつも聞いていないし、直接彼らと話をしたことがあるわけでもない。いつだって私が最後に信頼するのは、本人が大勢に向けて発信するために選んだことばだけです。そういう位置を選んできたから。

浜口浜村が好きだった。初めて観たプレスリーのことをこのダイアリに残さなかった悔しさはずっと忘れないと思う。すっごく面白いとか楽しいとかじゃなく、いつのまにか血をたくさん抜かれている献血のような快感を与えてくれる漫才だと思ってた。浜村氏の書いたネタを、なんでもないことのようにやってのける浜口氏が好きだった。それをおかしいだろと言いながら、頭のおかしいネタを頭がおかしいと内に愚痴っている浜口氏が好きだった。浜村氏は何かにつけて、浜口氏が自分に付き合ってくれていることに感謝してた。

無期限休養を発表して、戻ってきて、衣装を変えて、自主ライブをやって、勝手にもう大丈夫だと思っていた。誰かの解散の発表があるたびに、そんなふうに思えてしまう自分がいる場所の浅さと、そんな憂いを感じさせずに舞台に立つ芸人という人たちの生きざまに感嘆する。あれはきっと、舞台のマイクにかかっている魔法なんだろうな。
うわさを聞いたときから、どうしてその選択をしたのだろうとずっと考えていた。教えてもらえるなら聞きたかった。こちら側には知りえない理由はやきっかけは山ほどあるだろうけれど、彼らはとても愛されていたし、その道を生きるにふさわしいコンビだとしか思えなかったから。でも、コメントに残されているように、いつもしれっと楽しそうに相方が書いたネタをやっていた浜口氏が、「少しも思えない」と思っていたということ、これ以上に、彼らがこのコンビ名を掲げることをやめる理由あるだろうか。シュライブくんは、ともだちを失ってしまったのだ。

私が喜んで通っている小さい劇場の舞台の上は、こんなにも幸せでうれしいものなのに、それでも「続けることをやめる」芸人さんがたくさんいる。この世界に限らないけれど、その選択をする勇気は計り知れず、そもそも私が「うれしい」と感じる程度のことで、彼らの何が報われるのだろうと、これまでも幾度となく思った。それでも、続けていく人にも、離れていく人にも、仲間や応援してくれた人がいたということ。私はそういう、他人様の夢のかけらを食べて生きているなあと、今年の年末も思うのでした。

東京は 夢のカケラでできている
叶ったり 叶わなかったり どっちでもなかったり
そうやって カケラになった夢が くっついたり重なったりしてこの街はできてる

ドド博での「その時、歴史が動いた」で話していたこと。私がドドんを初めて観た「プレスリー」の17回目で、今日で終わっちゃうバトルライブだからがんばってきなさいと言われた石田氏(観てる側はもちろん最終回だとは知りませんでした)、2位にはなれたけど…と思っていたら、終わったあとFu-の裏で演者さんに「こんなふうになっちゃってごめんなさい」と泣きながら謝ってたショートカットの女性が居て、それがコジマさんだったと。その姿にとんでもないライブに巻き込まれたと思った石田氏(笑)。私もプレスリーが大好きでした。