空想組曲VOL.10「虚言の城の王子」@吉祥寺シアター

【出演】
加藤良輔 植田圭輔 渡辺和貴 川田希
二瓶拓也(花組芝居)堀池直毅(少年社中)小野川晶(虚構の劇団)
こいけけいこ 鶴町憲 上田理絵(A-LIGHT)
中田顕史郎 大森美紀子(キャラメルボックス
【作・演出】 ほさかよう

きっかけは二瓶くんから。気になっていた空想組曲さんの舞台、評判からもどきどきしていたのですが、想像以上に良かったです。絶望は日常のなかに転がっていること、それを無かったことにしたり、都合よく完結させてまた生きていくこと、それができること自体を「幸せ」と呼べばいいじゃないというメッセージ。絶望を感じ、抱えることすらも希望であり幸せなのだと。
母が倒れたときから今まで、変わるわけがないものを納得するために、何度も何度も自分に言い聞かせてきたことをストレートにぶつけられて、「それでいいんだ」と思えて胸がいっぱいになって、また久しぶりにあんな感情で泣けた気がします。「絶望は、時間の流れとともに小さくなることはあっても、なくなることはありません」という断言に救われた。その事実すらも絶望であり希望である。一度壊れてしまったものは二度と元には戻らない。つぎはぎや、不格好なものと、折り合いをつけて生きるしかない。大なり小なり、それを実感して生きているだけ、私は幸運だと思いたいのです。

戦国鍋でもよく見る植田くんは、心の傷によって声が出せない少年役だったのだけど、後半、やっと話したと思ったら結構な低音ボイスだから、初めて植ちゃんを観たお客さんはびっくりしたに違いない(笑)。私もびっくりしたもの。二瓶くんのお兄ちゃんも、ときめきだったなあ…薄暗い闇を抱えた兄弟が最後にマジ泣きしていてますます涙が出たよ…。あと個人的にはミチルと「おとうさん」がかわいすぎて萌え萌えでした。ミチル…!かわいい…!敬語なのもいい…私そもそも幼子とおっちゃんの組み合わせに弱いんでしたよ!
物語のこんがらがり方は恩田陸みたいで、キャラクターのかわいさと切なさのエッセンスは小川洋子みたいな感じ…。美術面の演出もすごく良かったですし。