おまえさん/宮部みゆき

おまえさん(上) (講談社文庫)

おまえさん(上) (講談社文庫)

おまえさん(下) (講談社文庫)

おまえさん(下) (講談社文庫)

文庫版で読了。新しい登場人物たちもたくさんで、みんな魅力的でした。相棒同士であった平四郎旦那と弓乃助がそれぞれ少しずつ距離を取り始めたり、周りを取り巻く人たちの過去や行く末が少しずつ明るみになるなど、どの描写も丁寧で感服いたしました。大叔父上大先生(まるで監察医役!)と、弓乃助兄ちゃんの淳三郎の魅力といったらもう!
帯に「それでも人は恋をする」とあるほど、今回のテーマは恋愛、というか愛情というか、それに絡む濃厚な人の情のもつれというか。男女間や親子愛やもっとややこしい関係の結びつきがたくさん描かれてました。シリーズ2作目の前作が、大団円な終わり方だっただけに、今回は切なくほろ苦さが目立ちました。いろんな人の「おまえさん」なんですね。
大叔父上大先生が信さんと向かい合ったときのことばに泣けてきてしまった。己の名前が書けることはとても重要だ。あと、平四郎の旦那が情に厚い女は「佳い女だ」と言っていたけど、希薄な私は一生佳い女にはなれないなと思いました。