ばんば憑き/宮部みゆき

ばんば憑き     

ばんば憑き    

宮部作品の江戸物が好きすぎて、読み終わるのがもったいなかったです。特に「三島屋〜」の青野先生は好きなので、「討債鬼」良い話でした。「何でも屋」も、シリーズになるといいなあ。ここまでものの怪を豊かに描く物語も珍しくて、新鮮で良かったです。
「博打眼」が、とても気味悪くおどろおどろしいものなのだけれど、犬張り子で退治するというのがなんともかわいらしくて、全体的に「クレヨン王国」のようだなあと(シルバー王妃新・十二ヶ月の旅のなかに、たくさんの犬張り子が出てくる月がある)わくわくしながら読み進めてしまいました。竹兄の過去は気になりますが、お美代ちゃんというおしゃまでかわいい女の子の目線だったことも、心温まる雰囲気に終始していました。怖いものは、「むつかしくて、わかんない」。
表題作は心苦しい話でした。左一郎が心変わりしてしまったように見えるけれど、きっとそうやっていろんなことを天秤にかけて、傾いているほうに寄りながら人間はずっと生きていくのだな。