くまちゃん/角田光代
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/03
- メディア: 単行本
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槇仁の話が切なくて好きだった。当たらずして砕けてしまった、ある意味一番苦い失恋だった感じ。好きなのに、「だれとでも」扱いされるなんて喪失感ハンパないと思う。あとは、ゆりえが言っていた「その人になりたいってことと恋は似ている」ということばが嬉しかった。それが分かりあえないひとつの価値観であるということも。この作品は恋愛を軸に、「社会人として」とか「成功するとは」とか「仕事」とか、おとな特有のキーワードが張り巡らされており、それがまた真綿で首絞めでした。
ヒデを心酔させたアーティストってモデルはいるのかなあ。富山が出てきてびっくり。
以下はこれに併せての個人的なできごと。完全な蛇足。このことで、読了後の昨晩はしばらく気分が塞いで眠れませんでした…
私は大学一年のとき、先輩だった男性にものすごく傾倒した時期がありまして。その期間だけはとても短く、なぜならその人は、私の友人と(そんなつもりはなかったけどほぼ私が紹介した形で)付き合うことになって、そのとき初めて、あー私はこの人のことがものすごく好きだったんだと気づき、当たらずして砕ける恋をしたわけです。独特でむずかしいことを常に考えているその人はとても魅力的で、憧れというより、本当に心酔だった気がする。
その人と友人は卒業後も続き、きっと結婚するのだろうと思っていたのだけど、卒業して2年ほどで別れたということを知った。その人が学生時代と変わらず我が道を進むことを曲げないために、「将来が見えない」という理由で。特殊な仕事なので、その人のサイトやブログは簡単に見つかり(一時期はてなダイアリを書いてることもあった)、まったく縁が切れた今でも、相変わらずらしいその人の動向を知ることは出来た。なんとなく気になって、ときたま覗いてみたりしていた。
そしたら、つい昨日、その人が今年の夏に結婚したということを知る。これは少なからずショックでした。もう恋愛感情も何もないですが、卒業後も、友人と別れたあとも、その人が相変わらずその人であるということは、私にとってある意味「救い」だったのだなあと痛感したのです…。
結婚がゴールだとかそういうことではないけど、これをきっかけに、その人のブログを定期的にチェックしたりするような、恋でもなんでもない訳の分からん気持ちを、いい加減切り捨ててなあかんのだと思いました…。ああもう、うっかり8年近くも経ってしまった。なんだろう、あのころの苦い思い出に浸りたいだけだったのかなあ自分。今思い返せば、唯一のちゃんとした恋だったのに、もっと清々しくきっぱり失恋したかった。だからこんな、灰汁みたいな感情だけが残っちゃって。